いま、スターネットとは?

いま、スターネットとは?

久しぶりに訪れたここで、はじめに感じたのは、いろいろな「気配」でした。

不思議なご縁から、スターネットの運営に関わることになったのが2024年。いま、この文を書いているのが2026年夏。2年前のことになります。

スターネットが生まれたのが1998年。オーガニックを中心にした地元食材の料理やドリンクを提供するカフェと、誠実な手を持った人々が作り上げるものたちを提供するストア。

創業者の馬場浩史さんが、東京の暮らしや仕事を離れ、たどり着いたのが、益子の池ほとりにあるこの場所。グローバルな社会の表層を生きるのでなく、ローカルの小さな社会で足元から日々を積み重ねる暮らし。深い森の丘と、鴨が住む池に守られるようにあった場所でスターネットの営みが始まりました。

人が一日で歩ける半径40km程度の範囲で衣食住が循環する、クリエイティブな自給自足。こうした考えのもと、地元陶芸作家さんとの器、益子につながるクリエイターの服や雑貨、命の健やかさを何より大切にする地域の生産者さんの野菜や素材で作られる料理。スターネット自身も、畑や養蜂、そしてエネルギー自給など、さまざまな実践を行う場が作られていきました。

しかし、残念なことに、馬場さんは2013年に逝去。その後、スターネットは馬場さんの思いを引き継ぐ方々によって継がれてきました。


丘の上に建つZONEは、ギャラリーでもあり、作家たちが新しいものを生み出すラボであり、ここには馬場さんの居宅もありました。しかし、ここ数年は閉じられ、ZONEは長い眠りに。

十数年ぶりにスターネットを訪れ、ZONEに滞在し、そこに濃くあったのが、過去からの「気配」。長く閉じて、止まっている空間、しかし、ここを包む樹木や風や星や月といった生命と宇宙の息吹。断片として残されている言葉や写真の残像。

スタッフとともに、スターネットという場を「ひらく」ことで、静止した「気配」が、生に満ちた「実像」となって再び進み始めるのでは。そんな思いを抱いて、スターネットの営みは再始動し、いまも日々を積み重ねています。

カフェでは、フードハブプロジェクトさんとeatrip野村友里さんのご協力をいただいて、地元の生産者さんの食材を使った発酵ガレット・発酵クレープメニューの提供を昨年から開始。

ストアでは、地域の作家さんとの協働のみならず、全国各地で伝統工芸や地場産業の持続に取り組むブランドや作り手さんと連携し、誠実な手をもつ人々による衣食住のプロダクトや食品を販売しています。


例えば、東北の野良着をベースに服づくりをし、永久修繕の仕組みで提供販売する岩手県の「縁日」。遠州織りの技法を持続する織物工場からの風合いのいい素材で服づくりをする静岡県の「HUIS」。思いでつながるみなさんとの協働が徐々にですが広がってきています。


ギャラリー活動も、第一線で活躍する写真家、画家、イラストレーター、造形作家の企画展、地域で活動する若手作家やミュージシャンの企画やライブ、素材や丁寧な技法にこだわる服づくりブランドのPOPUP、益子や各地の陶芸作家の展覧会をほぼ毎月のペースで開催しています。



こうして、スターネットを再び「ひらく」。多くの生産者、作家、クリエイターのみなさんとの関わりをいただいて、スターネットを訪れる方々に、小さな「豊かさ」をお裾分けする。こうした循環を生み出す場としてスターネットを営んでいきたいと願っています。

スターネットとは、星の網。私たちが目指すのは、誠実なものづくりの手を持つ人々と共に作る「星図」なのかもしれません。そんな思いで日々を積み重ねていければと。


スターネット代表 及川卓也